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格付け機関は格付け料を得られる。 組成者は高い値段で証券を売れるからだ。
組成者ではなく投資家が格付け料を払うべきだという議論があるが(一九七○年代までは投資家が格付け料を払っていた)、投資家も歪んだインセンティブを持っているので、この議論にしたがってもうまくいかない。 これでは、サブプライム関連証券の持つリスク情報は人々に届かない。

サブプライム・ローンの損失率(貸し倒れ率×貸し倒れ損失率)は六%と見なされていた。 この低い損失率がサブプライム証券の上位の部分にトリプルAをつける理由となった。
しかし、そもそも、サブプライム・ローンとは九三〜九四年ごろに初めてできたものだ。 それ以前、信用度の低い人に住宅ローンを貸し付ける銀行はなかった。
アメリカは九二年の不況以来、二○○○年のITバブル崩壊不況まで不況を経験していない。 しかも、ITバブル不況のすぐ後に住宅バブルが始まった。
住宅価格は、この期間、一貫して上がっていた。 住宅価格が下がったとき、サブプライム・ローンの損失率がどうなるかというデータは存在していない。
もちろん、常識でプライム・ローンの貸し倒れ率や貸し倒れ損失率(これなら過去にさかのぼってデータがある)を参照することもできただろう。 プライムの期待損失率が二倍になるなら、サブプライムも二倍になるというようにだ(現実にはもっと大きくなるだろう)。
しかし、格付け機関は、そんなことはしなかった。 データを真剣に検討していなかったと言われても仕方がないCDOでは残高四○○○億ドルに対して損失が二九○○億ドルと損失率は七三%と異常に高い。
これは危なそうな貸出を証券化して、そうでもないものは自分で持っていた結果と言えないだろうか。 過去の住宅債権の、銀行のバランスシートにあった時の倒産確率は、証券化した後では変わってしまう。
銀行貸出とは、必ずしも確率的に処理できるものではない。 また、過去のデータがないことによって、現在の好況期のデータのみを使うという誘惑がある。
誰しもが甘い格付けを求めるインセンティブがあるときにはなおさらだ。 まず、貸し手と借り手が切り離されている。
貸し手が銀行であれば、銀行は借り手がきちんと返済してくれるかを見極めるインセンティブを持つ。 回収についてももちろんだ。

しかし、住宅ローン契約を結ばせるのはブローカーまたは小規模の住宅専門金融機関で、最終的な貸し手ではない。 ブローカーには契約手数料を得るインセンティブがあっても、借り手が継続的に返済してくれそうか、実際に返済するかをチェックするインセンティブはない。
新銀行東京の社員へのインセンティブ・システムでは、融資担当者が貸し付けて六カ月間、元利返済が滞らなかったら二○○万円のボーナスがもらえたということが明らかになったが、アメリカのサブプライム・ローンも同じだったと言ってよいだろう。 サブプライム・ローンが盛んになったのは、過去の返済履歴を見ると、高い金利が得られる割に貸し倒れ損失率が低かったからだ。
しかし、積極的にサブプライム・ローンを拡大しようとすれば、債権の質は悪化する。 サブプライム・ローンを拡大するために取られた戦略は、初期の返済額を低くし、残りの返済額を大きくすることだった。
二年間、三年間の金利は六〜七%だが、その後には金利が倍の一三〜一四%になるというようなローンが盛んに契約された。 そのような高金利では到底返済できないだろうと思われるが、住宅価格が上昇すれば担保価値が高まり、また、二年間元利を返済することで信用度が上がることにより、サブプライムからプライムに借り換えでき、返済が可能になった。
しかこれは住宅価格が上がり続けていればの話である。 住宅価格の上昇が止まれば、借り換えはでさらに略奪的貸出という問題もある。
略奪的貸出とは、住宅ローン契約を代行するブローカーが、借入者の無知に付け込んで、借入者に極端に不利な金利条件、手数料などを取ることである。 しかし、略奪的に貸し出しても、略奪される人にお金がなくなれば、最終的には貸付者が損をすることになる。

ただし、略奪的契約をした人はその契約を売ってしまっているので、損をするのはその契約を集めてつくった証券の購入者である。 アメリカの住宅ローンは、ほとんどがノン・リコースである。
ノン・リコースとは、ローンを払えなければ、担保の住宅を債権者に渡すことで、債務の追及は免れるというものである。 略奪的に貸し付けても、住宅価格が低下して借り手が返済できなければ、結局利益は得られない。
さらに、略奪的貸出だけでなく、住宅ローン・ブローカーのまったくの不正という問題もある。 ブローカー、借り手、不動産鑑定士、不動産業者がグルで、銀行から住宅ローンを開け取るという犯罪もあった(これらのスキャンダルについてはビトナー〜二○○八〜に詳しい)。
サブプライム・ローンは悲劇だけなのだろうかサブプライム・ローンはまったくの悲劇なのだろうか。 これまで住宅を保有できなかった所得の低い人々に、住宅保有の機会を与えたのは事実である。
実際、すべての住宅ローンが貸し倒れになっている訳ではない。 特に、住宅価格が暴騰する前の二○○四年以前に住宅を購入したサブプライム・ローン利用者の多くは、住宅を失うことなく新たに入手できることになるだろう。
住宅ローンを契約した年次ごとに、何カ月たつと六○日以上の債務不履行者がどれだけ生まれるかを示したものである。 二○○四年以前に契約した人の債務不履行率はほぼ四分の一にとどまっているのに対して、二○○五年以降に契約した人の債務不履行率は急増している。
逆に考えれば、二○○四年以前に住宅ローンを結んだ人の四分の三以上が住宅所有者になれ、自分の家を持つというアメリカン・ドリームを実現できたわけである。 FRB理事であった故E・G博士は、「アメリカの歴史を見ればブームとその破裂が大きな役割を果たした。
一九世紀には運河ブーム、鉄道ブーム、鉱山ブーム、金融ブームがあった。 二○世紀には別の金融ブーム、株式ブーム、戦後ブーム、ドットコム・ブームがあった。
最初に革新があり、広範に投資された。 そして価格がついていけずに崩壊し、多くの投資家が資金を失った。
金融の残骸が残され、多くの投資家は、次はより用心しようと学ぶ。 しかし、ブームの果実は残っている。
運河と鉄道はあり、機能している。 鉱山は発見され、使われている。

金融革新は存在している。 インターネットとその機能は使われている」と言っている。
こうした企業も投資家も救われなかった。 それでも革新は起こり、アメリカは発展してきた。
今回も、これまで住宅を所有できなかった人々が新たに所有できたのだと言う。 もちろん、あらゆる自由を擁護しているのではない。
G博士は、サブプライム・ローンをめぐる詐欺的事件に警鐘を鳴らし、厳しく取り締まるべきだと主張してきた。 しかし、これまで失敗した企業家を打ち捨ててきたアメリカも、今回は救わざるをえない状況に陥っている。
問題はサブプライムだけではない不況になれば、サブプライム・ローンの返済率が低下し、貸し倒れ率が上昇するだけでなく、すべての債務返済率が低下し、貸し倒れ率が上昇する。

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